放射能鉱物について
当館では放射能を比較的多く持つ鉱物を多数所有して居りますが、その中で放射線量が少なく危険でない下記のものを展示して居ります。
これらの鉱物の殆どがウランかトリュームを含み、主として
α線
と若干の
γ線
を放出します。
展示されている放射能を持つ鉱物を陳列ケース別に並べたもの
和文名
英文名
産地
階
Sec.
北投石
Hokutolite
北投温泉
1
6
北投石
Hokutolite
田沢湖町
1
6
北投石
Hokutolite
玉川温泉
2
6
サンプルはすべてガラスのケースに収納されているので
α線
が外に漏れることはありません。
γ線
はケースのガラスを突き抜けますが、陳列ケースのガラスに長時間密着して滞在しない限り危険ではありません。
人類誕生の太古から我々の周囲には放射能を含む鉱物があふれております。空からは宇宙線や放射性物質であるラドンが常にふりそそいでいます。放射線について正しい知識を身につけて対処しましょう。
放射線の基礎知識につきましては
独立行政法人 放射線医学総合研究所
の
放射線Q&A
のページ
http://www.nirs.go.jp/info/qa/index.shtml
をご覧下さい。
また日常生活と放射線の知識につきましては下記のホームページをご覧下さい。
一般人が日常浴びる放射線量や一般公衆の線量限度などが示されております・
資源エネルギー庁
http://www.enecho.meti.go.jp/rw/hlw/qa/pdf/sanko02.pdf
財団法人 環境科学技術研究所
http://www.ies.or.jp/japanese/mini/mini_30a2.html
第一原子力産業グループ
http://www.fapig.com/mame/pdf_file/2.pdf
鉱物・岩石と放射線に関係した Q & A
Q1
現在、北投石の岩盤浴が話題となっていますが、実際どの位の放射能が出ているのか知りたいので、放射能量を教えていただけませんか? また、人体への影響はどうなのでしょうか?
(Jan. 23, 2006 K. H. さんより)
A1
こちらに
回答を書きました。
鉱物・岩石と放射線に関係した文献
湊進
日本における岩石によるγ線量率(英文):
RADIOISOTOPES,2005;
Vol.54,No.3,pp.79-84
黒澤龍平
私の履歴書 ラドンと過ごした40年:
ISOTOPE NEWS,2005;
No.617 Sep.,pp.27-30
P.Curie と M.S.Curie 夫妻による新放射性元素 Po 及び Ra の発見(1898年):
RADIOISOTOPES,2005;
Vol.54,4月
α線,β線の発見(1899-1900年):
RADIOISOTOPES,2005;
Vol.54,5月
Raのγ線の生理作用の発見(1900-1901年):
RADIOISOTOPES,2005;
Vol.54,6月
Ernest Rutherford による原子の放射能崩壊説(1901-1903年):
RADIOISOTOPES,2005;
Vol.54,6月
我が国に初めて Ra が到来(1903年):
RADIOISOTOPES,2005;
Vol.54,7月
我が国に初めて温泉及び大気中の放射能測定(1910-1913年):
RADIOISOTOPES,2005;
Vol.54,7月
V.F.Hess による宇宙線の発見(1912年):
RADIOISOTOPES,2005;
Vol.54,8月
石津利作による我が国温泉及び鉱泉の放射能調査(1912-1915年):
RADIOISOTOPES,2005;
Vol.54,9月
黒澤龍平
私の履歴書 ラドンと過ごした40年:
ISOTOPE NEWS,2005;
No.617 Sep.,pp.27-30
デジタル技術の進歩で現在では大気放射能からの放射線を測定して瞬時にその放射能物質を知ることができます。
この報告では、岡山県が(独)日本原子力研究開発機構人形峠環境技術センターで付近での環境放射能が、
降雨に伴う自然要因によるものであねことを報告しています。
放射線関係用語
ベクレル (Bq)
ある物質の原子核が壊れながら放射線を出す能力を
放射能
と言う。放射能の強さは1秒間あたりの崩壊数で表し、単位として
Bq(ベクレル)
を用いる。もし1秒間あたりの崩壊数が 1 である放射能の強さは1Bqということになる。ベクレルという単位は日本では1978年5月から用いられ、それ以前は
キュリー(Ci)
が使用されていた。1Ciは
1gのラジウムの毎秒の崩壊数
で、3.7×10の10乗である。したがって、
1 Ci=3.7×10の10乗 Bq
となる。
半減期
放射能が最初あったものの半分になるまでの時間のことを
半減期
という。(例えば半減期1時間の放射性同位元素が今
100Bq
あったとすると、1時間後には
50Bq
になり2時間後には
25Bq
になる。)
グレイ (Gy)
吸収線量
の単位を表している。放射線の作用により物質がどれくらいのエネルギーを吸収したかを表すもので、
1Gy(グレイ)とは、物質1kgあたり1ジュールのエネルギー吸収
があることを示している。Gy/hr は単位時間あたりのエネルギー吸収を表している。通常計測に用いる吸収させる物質としては空気が用いられる。よく使われる
Sv(シーベルト)
という単位は、
線量当量
といい、吸収線量 (Gy) に、人体に対する放射線の生物学的影響の度合いを係数としてかけたものである。古い吸収線量の単位は
rad(ラド)
で、
1 rad=0.01 Gy
または、
1 Gy=100 rad
である。
シーベルト(Sv)
放射線防護の目的に用いられている放射線量の単位、
線量当量
と言う。種々の放射線に被ばくした際、線量の合計は各放射線の物理的線量(単位はグレイ)にそれぞれの放射線の生物学的な影響の強さに対応する係数を掛けて合計する。ガンマ線に対する係数は1なので
1 Sv=1 Gy
となり、原爆放射線などに多く含まれている中性子に対する係数は10なので、
1 Sv=0.1 Gy
ということになる。古くは放射線量の単位として
rem(レム)
という単位が用いられた。
1 Sv = 100 rem(レム)
である。
放射線と放射能
放射線は、
高エネルギーの電磁波(
X線・γ線
など)や、運動エネルギーをもつ
電子(β線)、原子核(α線)や中性子線
などの粒子で、それが物質を通過するときに、物質中の原子や分子に作用して電離したり熱エネルギーを与える能力をもつものをいう。これに対して
放射能とは
物質が放射線を出す能力を言う。厳密には、放射能という用語は、次の2通りの意味で使われる。(1) ある原子核が放射線を出して別の原子核に変わる(
放射壊変
)性質。(2) 放射壊変の強度(
壊変率
)。
はかるくん
で計ってみました
2005年の8月、岐阜県各務原市のTさんから花崗岩と放射線に関して質問のメールが入った。Tさんは息子さんと夏休みの宿題のテーマとして、墓石の放射線の測定をされていた。使用した放射線の測定器は
(財)放射線計測協会
が無料で貸しだししている
「はかるくん」
とのこと。筆者も早速放射線計測協会にお願いして借用し、早速使用してみた。
「はかるくん」
はCsI(ヨウ化セシウム)を検出器に使用したシンチレーションカウンターで、重量は 260gときわめてコンパクトで、表示はデジテルで簡単に読み取りができる。
バックグラウンドは博物館の展示室内では
0.04μS/hr
程度、隣接している研究室では
0.03μS/hr
程度であった。また館内でもっとも放射線量が高いウラン鉱石を展示しているケースの表面では
0.24μS/hr
を示した。
館内には墓石の原材料となる花崗岩を20点ほど展示しているが、いずれも直径15センチ以下で小さいということと、陳列室のバックグラウンドが比較的高いということもあり、ケースの表面での放射線量はバックグラウンドと変わらなかった。
「はかるくん」
を筆者の墓地に持ち込みいくつかの墓石の表面の放射線量を計ってみた。墓地はバックグラウンドが
0.03μS/hr
と自宅付近よりやや高く、墓石表面では
0.04μS/hr
から
0.07μS/hr
程度であった。黒い墓石より白い墓石の方が高いように感じた。墓石にも使われている御影石と呼ばれている石材には,花崗岩類の他斑レイ岩という岩石があるが、斑レイ岩は花崗岩に比べると放射線量は低い。
「はかるくん」
は使い方も簡単で便利である。費用もかからないので気軽に利用してみよう。問い合わせは下記まで。
(財)放射線計測協会
のホームページは
http://www.irm.or.jp/hakarukun/
「はかるくん」
は使い方と活用方法については下記の文献が参考になります。
石沢昌登
簡易放射線測定器「はかるくん」とその活用:
ISOTOPE NEWS,2006;
No.631 Nov.,pp.29-32
文責
平成19年3月21日
秋田大学鉱業博物館研究員 成田裕一